アレクサンドル・ブロツキー、イリヤ・ウトキン《ガラスの塔》1984年 セントラル硝子コンペ入選作品
この海辺の塔が、いつ、なぜ、誰によって建設されたのか、そしてそれがいつ、なぜ崩れ落ちたのか、知る者はいない。しかしそれは倒壊して、無数のガラスの破片となり、透明な山脈、死んだ街、あるいは先史時代に絶滅した恐竜の化石のように横たわっている。その基礎は浜辺に置かれ、その頂は大陸の奥深くへと消えている。周辺に暮らす人びとは、そこに再び新しい街や塔を築き、その高さを競っており、この破壊されたガラスの塔の存在に気づく者も、その頂が雲に隠れるほどであった時代を思い出す者もいない…。
はるかな高みから眺めた時のみ、太陽の光に輝きながら横たわっているであろうそれに、気づくことができるのだ。 p66-67