先日、某対談にてビースターズがいいと聞き、Netflixでながら見を始めた。
「わーズートピアみたいじゃーん」と軽い気持ちで見ていたが、レゴシのぬぼーっとした語りに引き込まれ、気がついたら1期全編見終えている始末である。
そんなわけで、忘れないうちに少し感想メモ。
ネタバレ含みます。
まるでズートピアな草食動物と肉食動物が共存する社会で、チェリートン学園という全寮制の学校を舞台に、動物たちの日常が描かれる。
普段は肉食動物もビーガン風の食事を摂るなど、様々な工夫により肉食の本能を抑えることで社会が成立しているが、本能を抑えられずに食べてしまったり(食殺という)、非合法の肉食を黙認する裏市があったりと、歪な構造の上になんとか共生社会を保っている状況である。
そのような中で、学園内演劇部のテム(アルパカ)が食殺される事件が起きるところから、物語が始まる。
演劇部には主人公のレゴシ(ハイイロオオカミ)や人気役者のルイ(アカシカ)が在籍していて、新入生の歓迎会で行う公演に向けて練習に励む日々であった。
普段は大人しく根暗なレゴシだが、ある夜になぜか本能を暴走させ、学園のウサギを食殺未遂を起こす。
その動物がヒロインのハル(ドワーフウサギ)である。
学園物としての構造は、レゴシ⇨ハル、ハル⇨ルイ、ルイ⇨ハル?、の三角関係から始まり、ジュノ(ハイイロオオカミ)登場後はジュノとハルがレゴシを取り合う形となる。
おそらくハル派とジュノ派に分かれるかと思うが、僕はハル派。
物語として、異種属(草食動物と肉食動物)の恋愛が成立するかが大きなテーマとなっているし、本能的に身体が拒絶しあってしまう2匹を純粋に応援したい。
あと、単にハルがかわいい。ビジュアル的にはジュノがかわいいキャラなのだが、常に状況を客観視しながらも、相手を気遣うことができるハルはとてもいい。
他方、ジュノは肉食動物中心主義的な価値観の持ち主で、所与の条件(ビジュアルな良さや肉食動物であること)を露骨に武器として使う。まあそれはそれで才能でもある。
という学園モノの醍醐味と並行して、捕食者(強者)と被捕食者(弱者)の共生についての難しさについて丁寧に描いている。
アカシカのルイは、草食動物でありながら学園内で絶対的な地位を築いており(ルックスや振舞いからキャーキャー言われてる)、肉食動物>草食動物という根本条件に抗う存在である。
それゆえとても、危うい。そして危うさがたいへんな魅力にもなっている。
学園のリーダーとして、相手が肉食獣だろうと物怖じせずに立ち向かう。必要があれば叱責し、殴る。が、その腕は悲しいくらい細い。
ルイはもどかしさを常に押し隠して、自信ありげに振舞う。すごくかっこいい。
ルイ先輩!!!と思っちゃうシーンが多々ある。
とはいえ、この物語の魅力の大半はレゴシにあると言っていい。
レゴシは肉食動物のハイイロオオカミであり、強者の部類だ。しかしこの社会ではその強者性は抑制されることが求められる。牙を向けただけで捕まる(たしか)。
だからレゴシは元来の根暗さもあって、弱者のフリをして過ごしている。
喧嘩だって、普通にやったら勝ってしまう。だから「どうやったら負けられるか」を考えてうごく。
他方で素朴な正義感があり、隠れて草食動物の血を飲んでいる(ドーピングという)肉食動物にはなりふり構わず本気で殴りかかる(それを止めに入るルイ先輩がほんとうにかっこいい)。
そして典型的な思春期童貞キャラ。
ハルちゃんとのラブホテルのシーンでは、肉食×草食セックスの本能的な不可能性が、童貞的キャラによって多少コミカルになっている。が、実際はとても重いシーンだよなあ(ところでなにを見させられているんだ?)。
『僕だけがいない街』の藤沼悟ぶりの低い声でのひとり語り、これがとてもいい。
原作も読んだ。構成がしっかりしててグイグイ引き込まれる。
アニメ版1期ではキャラクターの描写と物語の展開が中心で、最終話でなにも解決していない。ただ、レゴシ、ルイ、ハルを中心にキャラクターが魅力的なので、これからの展開が楽しみである。
きっとレゴシは肉食動物としての本能を受け入れて、だれかを食べるんだろーなー。ハルちゃんを泣きながら食べるのかなー。ルイ先輩は失意のうちに死にそうだよなー。
ところで気づいたら妻が原作漫画を全巻Kindleでゲットしていたので、一気に読んでしまおう。