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「壁」の教訓 『Game of Thrones』2

 

前回はGame of Thronesの魅力について、個人とシステムという視点を紹介した。

登場人物はときにシステム形成に関与し、ときにシステムに含まれ、ときにシステムに阻まれ、ときにシステムに殺される。

 

今回は若干のネタバレを含みつつ、シーズンをとおして語られる「壁」の教訓について書きたい。

 

壁の伝承

ウェスタロス(Game of Thronesで中心となる大陸)の北部には、壁(The Wall)と呼ばれる長大な建造物がある。

 

これが「壁」だ

 

数千年前にホワイト・ウォーカーと呼ばれる(半ば神話的な)種族による侵攻を防ぐために建設されたが、現実には異民族からの侵攻を阻むためのものになっている。

 

壁を守るためのアプリが出ているなんて!知らなかった

 

 

壁は冥夜の守人(ナイツウォッチ)と呼ばれる組織により管理されており、彼らが厳しい誓約のもとに、北部を守護している。

 

シーズン1のエピソード1では、ナイツウォッチを逃げ出した青年が、誓約を破った罰として処刑される(暗く重苦しい北部の雰囲気が存分に出ているシーンだ)。

 

壁について、あるいはナイツウォッチについて、ウェスタロスの人々は冷淡だ。

それは、ナイツウォッチの構成員が、元は罪人や厄介者といった社会から外れたものたちであることに起因する。

それに加えて、特に南部の人間にとっては、北部の伝承は神話に過ぎず、また「子どもの頃に聞かされた御伽話」に過ぎないのだ。

 

壁の現在

社会の外部として半ば放棄されている壁は、一部の良心的な人間によって辛うじて支えられている。

 

諸侯が王都を巡る攻防を繰り広げる中で、そのような壁に、人知れず危機が訪れる。

 

皮肉なことに、壁を守るためのナイツウォッチには、そもそも壁を守る力などなかった。

人員不足や兵器不足等、根本的に「王都からの予算削減」により組織力を維持できていなかったのだ、、、

 

 

壁の教訓

社会の外側についての想像力は、日常生活の中でおぼろげになっていく。

映画やドラマを含め、芸術作品全般は人々にそのような社会の外部を思い出させる機能がある。だから良い作品は、どこか得体の知れない気持ち悪さが含まれている。

 

社会の外側は、未知の暴力が跋扈している。

僕たちはそのことを忘れてはならない。

一度崩れた壁は、二度と元に戻ることはない。

 

大切なのは、「壁」を崩させないこと。「壁」を維持すること。「壁」に相応のコストを払うこと。

 

震災から9年目の今日、The Wallのイメージがふと浮かび、書いた。